■名作列伝011

超電磁劇団ラニョミリINTERNATIONAL・第11回公演

TENPAN

 

日時:2006年12月15・16・17日

場所:相鉄本多劇場

 


桜子は天皇家の一人娘。


しかも彼女の父である天皇は半年前から病に倒れ、皇位継承者問題に嫌が応にも注目が集まる…にもかかわらず、桜子は今日もラジオの競馬中継に夢中になっていた。


ゴールまであと少し。ラジオに向かって声援を送る桜子。と、そこで不意に桜子のラジオが取り上げられた。桜子の教育係兼お目付け役の小笠原である。競馬に熱狂する桜子に対し、自らの立場を自覚するよう、皇族としての心得を説くのだった。


小笠原が桜子に説教するのには訳があった。病に倒れたままの天皇がもし崩御された場合、「一人娘」である桜子は何らかの形で皇位を継承しなければならないのである。とは言え、天皇は男系男子と定めた皇室典範の規定により、女性である桜子には皇位継承資格はなく、天皇家存続のためには桜子に一刻も早く元皇族と結婚して男子を生んでもらうしかないのだった。


天皇家存続のために桜子を説得する小笠原。そして自分の意思に反して結婚させられることに反発する桜子。言い争う二人の前に、突然異様な男が現れた。宮内庁出入りの弁当屋、蘇我である。

突然現れた蘇我に対し驚く二人。


そんな二人を前に、蘇我は自らを大化の改新で滅ぼされた蘇我家の末裔である「元皇族」だと名乗り、皇室断絶の危機を回避するためとして桜子に結婚を迫った。桜子絶体絶命のピンチ!とその時、刀を携えた若者が現れた。桜子専属の護衛係・丸藤である。ぶつかり合う蘇我と丸藤。刀と刀が火花を散らすその最中、ラジオから信じられないニュースが飛び込んできた。


「天皇陛下は意識不明の重態に…」。もはや戦っている場合ではない。病院へ向かうために桜子達は蘇我を無視してその場を後にするのだった。

再び皇居。病院から戻ってきた桜子と小笠原の前に元皇族・吉野家の吉野雅紀が現れた。


皇籍復帰を望まない吉野は、「あなたのおかげで迷惑しているんです」と桜子を非難し、桜子に即位を迫った。そこに再び蘇我が現れた。自らの野望のためにも女性天皇を断じて認めるわけにはいかない蘇我は吉野に詰め寄る。その気迫に圧倒された吉野はついに最後の切り札を出してきた。


桜子を天皇に推薦する、元皇族男子全員の署名である。元皇族男子全員が女性天皇の誕生を待ち望んでいる…。明らかになった重大な事実に言葉も出ない一同。勝ち誇った態度の吉野。そこに堪忍袋の緒が切れた蘇我が飛びかかった。

それに対し吉野は懐から拳銃を取り出し蘇我に向けた。拳銃を前にして一気に空気が凍りついたその時、どこからともなく声が響いた。


7年前に天皇と離婚した元皇后・益美。桜子の生みの母である。感動的であるはずの母娘の再会。しかし益美もまた、桜子に即位を迫る。自分を追い詰めた皇室への復讐のために桜子に天皇に即位して欲しかったのだ。しかし、天皇になる気のない桜子にとって、母親のその夢は押し付け以外の何物でもなかったのだ。


そして、一人の人物の登場が更に事態を混乱させた。現皇后・うめ子である。

皇后に対し最敬礼の一同。しかしうめ子は、そんな一同を気にすることもなく自らが妊娠中の身であることを高らかに宣言した。


もしうめ子が男子を生めば、皇位継承者はその男子となる。そうなれば自らの地位も安泰、「現」皇后として堂々と振舞うことができるのである。そしてついに記者会見の時間が来た。病状発表の会見はうめ子の懐妊発表の場へと変わってしまうのか。意気揚々と桜子を伴い会見場へ向かおうとするうめ子。


それを阻止しようと桜子を呼び止める益美。桜子を巡り、文字通りの引っ張り合いを始めてしまう二人。まさに「物」のように二人に引っ張られる桜子。そしてついに桜子の我慢が限界に達した。


「私は一体、誰なの?天皇陛下の子供として生まれたことに、一体何の罪があるの?」問いかける桜子。その問いの答えを待つ間もなく時間は迫っていく。これ以上会見を遅らせれば、記者たちが疑念を抱く。それだけはなんとしても避けねばならない。「会見は私が行きます」。混乱を収めるべく、小笠原は桜子の代理として一人会見に向かうのだった…。

皇族である桜子に人並みの幸せは望むべくもないのか?

2600年続く「血のリレー」の果てに桜子が掴んだ未来とは?思惑と野望が渦巻く中、運命の記者会見が幕を開ける…。